小さなゲーム、それ自体を自動生成することはできるのか
小さなゲームを自動生成してくれる機械が欲しい。開発者はその機械が生成するゲームを遊んで良いゲームなら採用、面白くないならば捨てる、その作業だけでゲームが作れる。夢の機械だ。
人が後で見て取捨選択する前提なら、出来上がるものの大半は面白くなくても良い。それよりも大切なのは、ゲームの持つメカニクスが十分なバリエーションを持って生成されることだ。似たようなゲームしか作られないのではつまらない。
AI にゲームを作らせるという試みは昔から行われてきた。ANGELINA プロジェクト 1 では、自機の位置や重力といった変数に対して、ボタンを押すと倍になる、半分になる、符号(+-)が入れ替わるといった仕組みをランダムに組み合わせて、新しいゲームを生成する手法を提案している 2。これらのボタンが押されるたびに状態が切り替わる機構を Toggleable Game Mechanics (TGM)と呼び、スタート地点からゴール地点を目指すパズルジャンプアクションに対して、様々な TGM を適用して評価している。
ランダムな TGM の組み合わせから適切な TGM 群を選択するためには、遺伝的アルゴリズムを用いている。選択のための適応度は、自機を適当に動かしてゴールに到達するまでに、レベルのどの程度の範囲を移動したかを指標として用いている。レベルのあちこちを移動してやっとゴールに到達できる、というのが質の良いゲームと判定し、ゴールに到達不能なものは排除される。
ただ、このような方式で作られるものは、ある一定のゲームのバリエーションに留まっており、新たなゲームが作れているかと言われると微妙なところだ。新しいゲームを考えることは人間でも難しく、コンピュータにそれを作らせるのはとても困難である。
しかし最近、その制約を打破できる可能性のある技術が生まれてきた。ChatGPT に代表される、大規模言語モデル (LLM)を備えた AI チャットボットだ。
1. Games By Angelina ↩
2. Mechanic Miner: Reflection-Driven Game Mechanic Discovery and Level Design (pdf) ↩