ゲームを「ジューシー」にする
ゲームはその根幹のルールが楽しければそれで十分、見た目は最低限、音なんて無くて良い、ということに同意する人はほとんどいないと思う。ゲームはそのベースとなるルールの他に、それを盛り上げるためのプレイヤーの視覚や聴覚への刺激、演出が不可欠だ。
ゲーム開発者は、それら演出が適切になされているゲームのことを、ジューシー(Juicy)なゲームと呼ぶ。単純なブロック崩しをジューシーにすることで、同じルールを持つゲームがどれだけ楽しくなるかを説明する動画 1 や、ジューシーなゲームにするためのジュースとしてどのような演出があるかを説明する動画 2 などを見ると、ジューシーという用語が何を示しているかが分かる。
"Research: Making a ‘juicy’ game" 3 という記事は、上記の動画の内容を含め、ゲームをジューシーにする方法を紹介している。記事にはいくつかの方法が示されている。
- 色を加える。
- トゥイーニングやイージングを活用し、滑らかなアニメーションを実現する。
- イベントに応じてオブジェクトのサイズを変えたり、跳ねさせたりする。
- 効果音や音楽を加える。
- 多数のパーティクルでスモークや破壊、航跡を示す。
- 画面を揺らしてインパクトを伝える。
- オブジェクトに目と笑顔をつけて、それらが環境に反応するようにする。目は物を追いかけたり、瞬きをしたりし、口は感情を表現する。
- 音楽のリズムに環境が反応する。
- 攻撃された時に、ヒットストップ、ノックバックなどのアニメーションを加える。
これらの方法をうまく活用したゲームが、ジューシーなゲームと呼ばれている。ただ、そのジューシーという用語がかなり曖昧なことも否めない。
"Juicy: a useful game design term?"という記事 4 ではジューシーとは何を指すのかを深掘りしようとしつつ、確固たる定義にはたどりついてはいない。またその際にジューシーなカジュアルゲームの例として、PopCap 5 のゲームを挙げている。PopCap のゲームの中でも、様々な演出でプレイヤーを褒め称えることが非常にうまいゲームとして、Peggle 6 7 が思いつく。
Peggle は言ってしまえば画面上部からボールを打ち出して、それが釘に当たるのを眺めるだけのゲームだ。しかしなにかコンボを決めたりするたびに、ジミー・ライトニングというビーバーが出てきて、「ヤバい!」「革新的!」などと叫んでゲームを盛り上げてくれる。その他にも、最後の釘に当たる直前にはドラムロール&ズームイン、当たると第九が流れるという過剰な演出が光る、とてもジューシーなゲームだ。
こういった盛り上げ演出をゲームの中にきちんと取り入れていくことで、シンプルなゲームにおいてもよりプレイヤーが心地よく感じるものに仕立て上げることができる。短い開発期間においてリッチな演出を加えることは難しいが、パーティクルなどのエフェクト、操作に反応する効果音など、簡単でも効果的にジューシーにする手段はある。
また、ジューシーとは少し異なる概念かもしれないが、ゲームの「手触りを良くする」こと 8 も重要である。プレイヤーのささいな操作ミスを意図的に見逃して、正解の動作をより簡単に行えるようにすることで、より快適なゲーム体験を提供できる。
ゲームの根幹のメカニクス以外の部分にもこのように注意を払うことで、プレイヤーがより楽しめるゲームへと進化させよう。
1. Juice it or lose it - a talk by Martin Jonasson & Petri Purho ↩
2. ゲーム感覚と「ジュース」の秘密| Game Maker's Toolkit ↩
3. Research: Making a ‘juicy’ game ↩
4. Juicy: a useful game design term? ↩
5. PopCap ↩
6. Peggle ↩
7. [ヤバい!] Peggle のビーバーの台詞12種 [革新的!] ↩
8. 高評価アクションゲーム『Celeste』開発者が、“手触り“に関する極意を明かす。プレイヤーにストレスを与えないように取り組んだこと ↩